できるだけDIY

バイクPCキャンプ道具などを、あれこれいじってみる。ただそれだけのページです。

シックスムーンデザインズのスカイスケープトレッカーと劣化ウレタンの話

f:id:akanameko:20210612084049j:imageSixmoon designsというアメリカのメーカーがある。昨シーズンまで、ここの「ルナーソロ」というテントを使っていた。ワンポールでシングルウォールのUL系テントだ。どちらかと言うとトレッキング用テントなので、悪天候も多い日本の山岳にはベストフィットでは無さそうだが、何しろ軽いので、山的には正義だ。標高3000m超えの、槍ヶ岳山荘横のキャンプ地でも張った。写真は双六山荘横のキャンプ地だ。シングルウォールなので結露はあるが、シュラフカバーと併用すれば心配ない。

今シーズンからは、同じシックスムーンデザインズの、一部メッシュのダブルウォールで、両サイドに出入り口がある「スカイスケープ トレッカー」というモデルに替えた。ポールも2本使い、より居住性が良くなって、それでも十分軽く、いいことづくめで「ホントかいな?」という気までするぐらいの商品だ。ULスペック的にはルナーソロだが、使い勝手ではスカイスケープじゃないかと思い、米国から取り寄せたのだ。

f:id:akanameko:20210612085357j:image

下からチョロっと覗いているのは自前のグランドシートなので無関係だが、スッキリして良い感じだ。1泊してみたが、テントの頂点が一点に集まっていない(台形になっている)ので、圧迫感が少なく、蚊帳のように換気が良い。また山に持っていきたい感じだ。

ところがコイツ、上面パネル5面のうち一面がベタベタと加水分解していやがったのだ。開梱時すでにベタつきがあり、驚いた。この製品はシルナイロン製である。シルナイロンといっても、表面シリコーン加工、裏面ポリウレタン加工のようだ。表面サラサラ、裏面しっとりとなっているからだ。多分シリコーン加工だけだとメラメラ燃えてしまうため、危険性(法規制)に対処したと思われる。なお底面はシリコンコートだけのようだ。

で、べたついていたのはそのポリウレタン加工だ。この製品はアメリカメーカーであるSixmoon designsが中国の工場に作らせたものだ(中国製と明記してある)。工場の中国→購入したショップがある米国→本邦と、パッキングしたままで長旅を続けるうち、どこかで劣化したことも考えられるが、私は「中国の工場が生産工程上のミスを知らん顔して出荷し、米国ではろくに検品されていない」に一票!を投じたい。なぜなら、劣化していたコーティングは、5面あるパネルのうち一枚だけだったからだ。コーティング不良又は不良在庫の布地をカッティングして平気で混ぜ込んじゃうような縫製工場で生産されたんだろう。Sixmoon designsはいわばガレージメーカー上がりの新興企業だから、そういう生産管理であっても不思議ではない。以上は推測に過ぎないが、新品でこんなんじゃダメなことには変わりない。

返品すればいいという考えもあるが、何しろ米国渡来なので面倒なのだ。そこで、劣化したポリウレタンを除去するという地獄のような作業が生じた。

巷には加水分解して劣化したポリウレタンの除去について重曹を使うとか色々語られているが、除去したいのはパネル1面分だけ。ほかのパネルは健在なのだ。色々な溶剤で試したが、結局、ラッカーうすめ液と古タオルで除去する方法が除去力が強かった。タオル1枚ダメにした。

で、後釜に何を塗るかだが、

f:id:akanameko:20210612091422j:image

f:id:akanameko:20210612091021j:image

いずれも完全な失敗だった。高級ワックスはポリウレタン+アクリル、チューブ塗料はポリウレタンで、いずれも水性に仕上げてあるが、乾燥後には硬化して被膜となる。このテントのようにシリコン加工済みの布地だと、布地に染み込まないためだろう。ペリペリと薄膜になって剥がれるのだ。塗りたてでは染み込んで定着しているようにも見えるが、結局はダメである。完全乾燥後、布地を揉むと、樹脂成分が、あたかもフケや垢のように細片となって散りまくるのだ。

たぶん、軍用コットン幕等の、染み込みがよく厚手のな布地なら両方ともOKなのかもしれない(使用例がネット上で見られる)が、とりあえずの結論。

「シルナイロンにDIYでのウレタン加工は無理!」

である。4,000円以上の出費が垢と散ったわけだ。これを除去するには、布を揉み込んでペリペリにしたところにガムテープを当ててベリっと剥がすという、原始的な方法を取らざるを得なかった。

そのあと登場というか考えついたのが、シリコーンの再コートだ。世の中では「POLON-T」というシリコーンを溶剤に溶け込ませたコーティング材が密かに使われているが、「それだったら、テントのシームシールに使ったシームグリップ+SIL シリコンシーラントでもいいんじゃね?」と考えた。コーキング用のシリコンシーラントを薄めて塗る方法も広がっているが、難点は安いシーラントが半透明で見栄えがいまいちなことだ。半透明のシーラントなら400円ぐらい。日本中のホームセンターで買える。ただ透明度の高いハイクリア商品は平気で3000円とかの値段がする。その点、このシームグリップは縫い目をシールして余ったものである。乾燥後はきれいな透明であり、そもそもシルナイロンとの相性はお墨付きだ。そんなわけで、祈るような気持ちでシームグリップに賭けてみる。

f:id:akanameko:20210612092609j:image

材料はシームシールして余ったシームグリップと、ホワイトガソリン。3分の1ぐらい残っていたチューブを、青くないホワイトガソリンで良く混ぜると完全に溶けた。写真は半分ほどを消費して残った塗り終りの液なので、仮にシームグリップまる1本と数百mlのガソリンがあれば、ジャムのビン三つ分ほどの液ができ、テント一張りの薄塗りが可能な気がする。

f:id:akanameko:20210612092737j:image糊などよりずっと薄いが、たぶんPOLON-Tよりだいぶ濃厚な液性になった。まあサラダ油ぐらいか。それをペタペタ。快調に塗れる。世に出回るレポートによればPOLON-Tは「染み込んで乾いてしまえば艶消しになる」ようだが、今回の出来上がりは、その艶消し状態よりは高濃度であるのは間違いないが、一面に透明の膜が張るほどではない。あまり幕が厚くなると、結局はがれる予感がする。

f:id:akanameko:20210612093002j:image

何が正解か分からないのが辛いところだが、失敗するとテントが使い物にならなくなるだけにマジである。塗り終わって乾くと、内部には完全に染み込み、残余が一部、透明な膜になって表面(使用時は裏面だが)に張っている状況だ。6時間乾かし、収納したが、張り付きは問題ない程度だ。さて雨の日にどうなりますか。